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よみがえる思い出。こみあげる想い。ある墓じまいのエピソード

去年、ご来店されたお客さまのお墓じまいをするにあたり、墓前法要と永代供養墓へお骨の改葬のお手伝いをおこなった先日。

 

ご来店が秋だったので、ご高齢の家族の体を気づかい、「あたたくなる来春にしたい」とのご希望どおり、あたたかい春の陽射しに恵まれました。

お墓に彫られている名前を継ぐ家族がいなくなり、墓を守っていた姉弟も高齢になり、足腰が弱くなることから墓じまいを考えられたそうです。

半年ぶりにお会いしたお客さまでしたが、改葬まえの墓前法要が終わってから、こうポロっとお話しされました。

 

「昨日の夜は眠れなかった。考えると悔しくてね。なんでこうなってしまったのか…」

 

じつはこちらのお墓が建っている墓地は、本来お寺の墓地だったのですが、その寺が廃寺になり、管理者が変わったので、お墓を移設する人がふえたという経緯があります。(法要は別のお寺(同じ宗派)のご住職にお願いしました)

↳※こちらのブログにも経緯が書いてあります。

「【実家の墓じまい】母が大そう気にいっていた墓をしまう」

 

法要が終わって、中からお骨壷を取りだし、市外にある別のお寺の永代供養墓へ向かう前に、お墓にそなえていた花を、墓地内に建つ元の菩提寺の墓にそなえたいとお客さま。

 

「子どものころは、家の墓参りが終わったあとは、こうして寺の墓にも挨拶していた。うちの墓は空っぽになったし、この花がもったいないから、お寺の墓に花をそなえるね」

寺が存続していれば、墓も、そこに安置されている家族もそのままにできたかもしれないのに、諸行無常とは言ったもので、人の意志とは別に変わりゆく環境の変化を止めることができない無念を抱かれたのでしょうか。

手向けられた先が変わった供花が、一瞬、子ども時代を彷彿させたのか、お客さまはその寺のお墓を撫でて、思い出がつまった墓地を跡にしました。

そして、永代供養墓へ

墓が建っていた墓地から、およそ40分ほど離れている、佛照寺さんの永代供養墓へ改葬します。

 

住職の読経にあわせて唱和するお客さま。ときどき、顔をぬぐっておられたのは、「重誓偈」のお経により、過去がよみがえったからでしょうか。

 

法要が終わったあとは、先ほどとは違い、すこし晴れやかな笑顔になっていたように感じました。

 

「家族が亡くなる前に、この近くの病院に入院していたから、すこし懐かしかった。ここまで一緒に来てくれてありがとう」

「また、いつでもこちらにお参りくださいね」

 

 

家のお墓とともにあった長年の物語は、改葬によって終わりを迎えることとなりました。

ここから、またあらたな物語を紡いでいかれることを願っています。